サッカーW杯を直前にして、日本チームの監督が交代した。
突然の「事件」に、衝撃が走り、いろいろなコメントが走っている。
オリンピックとW杯は、世界中が注目するイベントだから、
「出場」はもとより「勝つこと」が要求されている・・・
私は、日本チーム・主将の長谷部誠選手の中・高の先輩だし
県立藤枝東高校卒。
女房も息子たちも清水東高校の卒業生だから、
Jリーグの監督、マスコミなどに友人・知人・教え子がたくさんいる。
だから、ハリルホジッチ監督の解任を聞いていろいろなことを思う。
一番の想いは、1998年・フランスW杯の最終選考で、三浦知良選手を、「いらない」といって、岡田武史監督が切り捨てた「事件」である。
その時、ヴェディ川崎の社長をやっていたクラスメートの森下源基君が「非礼だ!!」猛烈に怒った。
・・・私は「もっと怒れ!」と手紙を書いた。
「あんなことをやってはいけない!」と、森下君は、今でも怒っている。
同じことを、今回もやった。
W杯から考えるスポーツの4つの観点
金子達仁氏の『決戦前夜』という本を読み返してみると面白い。
今回,西野朗氏が新監督になったというので、突然「マイアミの奇跡」などと書く人が現れたからである。
この本は、1996年のアトランタ・オリンピックの時のチームの裏側を書いたものである。
ブラジルから得点した伊東輝悦選手は、隣組の瞭氏の真面目な息子さんだった。
当時の西野監督は守備重視の戦法。
これに真っ向から批判を浴びせたのが中田英寿選手だった。
中田選手は、数少ない「世界大会の経験者」で攻撃サッカーを主張して異議を申し立てたのである。
いま、急にマスコミは中田選手にコメントを求めるが、これをしゃべらせたいのだろう。
賢い彼は、はぐらかしている。
今回はどうなるか。
ロシアの結果を見るまでは、判断の是非は誰にも分からない。
本当に西野監督の「日本式のサッカー」は機能するのだろうか。
采配の責任者である日本サッカ―協会長の田嶋幸三さんの進退も注目したい。
スポーツには、4つの観点がある。
1つ目は、純粋にスポーツを楽しもうという観点である。
2つ目は、スポーツを通して利益を生み出そうという観点である。
3つ目は、スポーツを通して名誉を得ようという観点である。
4つ目は、スポーツがいかにあるべきかを考える観点である。
近年は、選手の背後に、②・③の影響力が強い。
②の観点でいえば、選手は企業の「動く広告塔」である。
支援している選手の活躍いかんが、スポンサー企業の利益につながる。
いろいろな思惑が交差するのは当たり前である。
③の観点でいえば、W杯は「スポーツの名前を借りた戦争である」という人がいる。
露骨に国威掲揚を標榜する国家もある。
クラブチームと異なり、ナショナルチームの戦いだから、政治も経済もスポーツ文化も選手の上に重くのしかかっている。
今年は2018年である。
1996年のアマチュア選手主体のチームから、22年経過して、W杯はプロ契約の選手だけのチームになった。
すでに、A代表として「世界大会を何度も経験している選手」の集団である。
特にヨーロッパのサッカー界に進出した選手はそのレベルと厳しさを体感しているはずである。
世界のレベルは、ピッチの上が選手のショーウインドウでもある。
如何に高く評価され・自身を売れる商品にするか。
ここには①はない。が、それを乗り越えたところにのみ④が生まれる。
プロ選手は、言い訳も、甘さは許されない。
W杯はそうした選手たちの戦いの場である。
ロシアW杯に向けて
選手たちにとって大切なことは「一定のレベルまでは、自力でのし上がらなければならない」ことである。
要求水準によってレベルが違うが、「技術」「知識」「意欲」「マナー」「視野」の5点から評価・期待・要求が変わってくる。
W杯では、「身体能力」という自力では賄いきれない潜在能力・サッカーの伝統・文化まで重層化してチームカラーになるから、その総合力が問題となる。
ブラジルのカナリア軍団はその典型である。
さて監督は何をするか。
戦術・戦法を通して、選手たちの能力を引き出し、組み立て、戦いに向かう姿勢を築かなくてはならない。
ペルシャの大軍を前にして、勇猛に戦ったスパルタのレオニダス王のように得意ゾーンに敵軍を引きずりこんで戦う。
「攻める」のか「守るのか」。
ハリルホジッチ前監督は100人からの選手を試したと聞く。
この中から23名を選抜する。
著名であるか、スポンサーの意向はどうかではなく、まさに④の冷徹さを前面に出して行動しなければ、日本チームは大敗するだけだろう。
西野監督は、今度は途中で不協和音が出ないように戦う軍団を作り上げなくてはならない。
世界基準の戦いには、偶然のスターを期待してはならない。
日本チームがW杯に2回出場できなかったら、日本のサッカーは壊滅的な打撃を受けるだろう。
「世界に飛躍したい。」
その夢を実現するためのブルーのユニフォームである。
J1リーグを頂点とした下部チームの隆盛は、W杯あってのものである。
高校生のころ、藤枝東高校のグランドに、西ドイツから来たクラマーさんのユニフォーム姿があった。
岡野俊一郎さんも故人になった。
あれから半世紀が経過した。
長谷部誠君を中心とした日本チームの堂々とした活躍を祈りたい。
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