アメリカ大統領選、トランプ氏の当選で何が変わる!? ~Message~

アメリカ大統領にトランプ氏が当選した。

 

泡沫候補といわれていた人が、「あれよ、あれよ」という間に、大統領になっちゃった。

 

偶然ではない。

これが歴史上の事実だから、好き嫌いを言っているまでもなく、この現実の上に、いろいろな対策を立てなくてはいけない。

 

「アメリカ第一主義」を掲げ、内向き政策をもって登場したトランプ氏。

 

ソ連が崩壊したのち、「世界の警察」を自・他ともに任じてきた国が「世界の安全と安定にカネをかける気はない」と宣言したのだから、世界秩序の根本的な構造的な変更がされることは間違いない。

 

このチェンジの隙間を狙って、ロシアや中国の覇権政策が、日本に強力な圧力で迫っている。

 

日本は一体どうのように対応したらよいのだろうか?

 

 

方向を決めるのは「私たち自身」

私は、「ソ連という国家」が崩壊する前後に、旧ソ連を2度ほど旅した経験がある。

モスクワもレニングラードもヤルタも・・・。

ここで凄まじい国家の寂れ方と、人心の混乱を目の当たりにした。

 

今、「北方領土」についての議論をするといっているが、そもそも、「北方」を言う言葉は誰が作ったのか。

「実に曖昧なのだ」ということを知っている人さえ少ないだろう。

 

1902年の日英同盟を知っていても、この時に「親英」か「親ロ」なのかという路線争いや議論が背後にあったことすら知っている人が少ない。

 

私は、高校生対象の講演で、20年後、日本は「親米」か「親中」になるか・・・と問いかけたことがある。

 

圧倒的に親米が多かったが・・・。

今後、日米同盟を考える上でも課題は同じであることを忘れてはならない。

 

すべての「選択権」は私たち自身にあることを忘れてはならない。

我が国の方向を考えるのは「私たち自身だ」ということである。

 

トランプ氏の当選で、「日本は日本だけでやってくれ」という話になると、沖縄のことも、北方領土のことも、資源・エネルギーのことも、人口のことも、国防のことも・・・将来に向かって「国家のかたち」を再検討しなくてはいけない。

 

この「現実」を、国民全体がもっと深刻に考えないと、とんでもなくなる。

 

現実は甘くない。

政治が遠い存在でないことをトランプ氏の当選が教えてくれた。

私たちは、無力な存在ではない。ポピュリズムに犯されてはならない。

 

 

今、教育にできる3つのこと

 

 

このような時に、「教育では何ができるか」。私は3点あると思う。

 

1つ目は、日本国の利益を明確に主張できる人間を育成することである。

リーダーを育成するというだけではない。

 

こうした状況を「しっかり理解し行動できる人間を育成しなくてはいけない」ということである。すぐに達成できないが意識しなくてはならない。

 

イギリスのEU離脱でも、ポピュリズム(大衆迎合)が国の進路を変えてしまった。

今回も、アメリカの「内向きのストレス」がポピュリズム(populism)を増長させ、世界の秩序と安定を根本から変更する選択をしてしまった。

 

歴史はいろいろなことを教えてくれる。

 

古代ギリシャ・アテネの衰退は、ポピュリズムで衆愚政治に陥り、ソクラテスを死刑にしてしまった。エースのプラトンは幻滅し「国家論・The Republic」 を書いたが、これはスパルタを念頭においた貴族制だった。

 

ローマの平和を崩壊させた「混乱と破壊」は、大衆が煽動政治家に踊らされて、「パンと見世物」に酔いしれて冷静な判断力をなくした結果だった。

 

 

2つ目は、自国(日本)の伝統・歴史を再認識し、曖昧になっている「日本の文化」をしっかり教育することだ。

 

難しいことではない。

自分の言葉で、日本の歴史・文化を語る力を教育することだ。

古い時代のことだけではない。

原爆のことも、震災のことも、地震のことも・・・。

 

歴史学習は、年代を暗記することではなく、自国の伝統文化を理解し、周囲にも他国の人にも「伝える力」の指導に重点を置けばいい。

 

例えば、大学入試センター試験で「鍔(つば)をテーマに出題したら、「何のことか意味がわからない高校生が多かった」が、そうした若者を作らないことだ。

わからなかったら、調べてマスターする生徒を育てることだ。

 

フランスのナポレオン1世に敗れたプロイセン(ドイツ)で、混乱した国家を見て『ドイツ国民に告ぐ』という講義を展開した哲学者フィヒテのことを思わずにはいられない。

指導者の姿勢は影響力が大きい。

ましてや、日常の指導者の言動の影響力は計りなく大きい。責任を果たそう!

 

 

3つ目は、「時代のチェンジ」を自覚させる指導をすることだ。

トランプ氏の当選を他人事として捉えず、アクティブラーニングのテーマに設定することである。「時代を観る眼」を養う絶好の機会である。

 

TPPの問題も、保護主義の立場をとるトランプ氏は否定的だという。

日本はどうするべきか。

 

平成天皇の生前退位の問題も、憲法改正の問題も、国家の基幹を動かす重要なテーマである。これらは、一見すると別々の問題に見えるが、「時代の節目」の現象とみれば、同一線上にある。

 

東京オリンピック・築地を取り巻く利権・18歳選挙・大学入試改革・金融政策・経済活動の行き詰まり・自衛隊の海外派遣・・・など、「時代のチェンジ」を象徴する課題も、トランプ氏の当選と同じ次元で捉えて議論することを勧めたい。

 

これは指導者の資質と能力が問われるが、しっかり勉強して乗り切る事である。

 

直近でいえば「大学入試問題」変わってくるだろう。

避けて通ることができないからである。

医療・介護・福祉・薬学・理学・工学など、関係が薄いとみることは危険である。

見えない変化が「見える化」するのは早いだろう。

次年度は確実に変化がみられるだろう。

 

すでにLEADESTは入試については「態勢を整えた・・・」と聞くが、それ以外の学校・塾・予備校の関係者も、意識を高く持つことをお勧めしたい。

 

トランプ氏の当選を傍観することは危険である。