知ってるようで知らない!?大学入試 第3回

大学入試の変化は、国公立大学ばかりではない。

全国の私立大学が、バッチリ影響を受ける状況にある。

現状はどうなっているか。

2020年以降、どのように変化していくか。

分かっているようでいて、案外、曖昧なことが多い。

 

先日、早稲田大学・政経学部などが2021年から「共通テスト」の受験を必須とすると発表した。

この「流れ」は、全国の私立大学に波及していくだろう。

私立文系の受験に「数学はいらない」という時代ではなくなるだろう。

また、「偏差値」についても正しく理解していない人が多い。

データの見方ではなく、受験生として心得ておきたいことを整理してみよう。

 

私立大学の特徴と多様な入試方式

私立大学には「建学の精神」がある。大学案内の最初に書いてあるところが多い。

推薦入試・AO入試の受験者はこの「アドミッションポリシー」をふまえて、志望理由書を書かなくてはならない。

「私は、この大学で何を学びたいのか」を明確に書くことである。

 

私立大学は、宗教的な普及を目的としてスタートした大学が多い。布教目的だから、講座の中に宗教の時間が必須になっている。キリスト教系の上智大学・青山学院大学・立教大学、神道系の国士館大学・拓殖大学。仏教系の立正大学・駒澤大学、福沢諭吉の精神を基軸とする慶應義塾大学、大隈重信の早稲田大学、その他、大谷大学・天理大学・創価大学・花園大学など宗教色を前面に出している大学がある。

 

最近は企業目的で建学した大学が増えている。一見、無色のように見えるが、企業のイメージアップ・CM目的が多い大学がある。志望校を決める前に調べておきたい。入学してから「こんなはずじゃなかった」と後悔しないように。

 

私立大学の入試は、公募推薦・AO推薦・スポーツ推薦・一般試験等、窓口は多様である。「この学生は、どの入口から入学してきたのか?」とわからない。

近年は、学生募集に苦労している大学が多いので、オープンキャンパスに行ったら「合格通知が来た」という大学・学部さえある。「就職先がなかったのでとりあえず進学してきた」という学生もいる。

本末転倒であるが、定員を割った大学が40%以上にも達する現状があるからだろう。私立大学の悩みは「中途退学する学生」が後を絶たないことである。進学目的が曖昧な学生は4年間の勉学に耐えられない。

 

推薦入試の拡大と基礎学力の重要性

「基礎学力がない学生」は、大学で学ぶ基準に達しない。

2023年までは入試選抜に使わないとしている「高校生のための学びの基礎診断」の構想も、今後どのように展開するのかわからない。国語・数学・英語の実力を「すべての高校生を対象」にテストする方針でいるからである。

 

「学習指導要領」の改訂とリンクして、学習改善から推薦入試・AO入試・就職試験に活用されるようになるだろう。

大学進学率の向上は「大学間の学力格差」をますます拡大させるだろう。

 

海外からの「留学生の学力保証」も多くの問題を抱えている。

私も中国人・韓国人・マレーシア人・タイ人・インドネシア人などの留学生を指導した経験があるが課題が多かった。

「留学目的」が曖昧で、就活と混同しているところがある。

留学生で定員をカバーしている大学すらある。嘆かわしい。

 

ちなみに「自己推薦」は出身高校長の推薦書がなくても、自分の意志で出願できる。

「指定校推薦」には学校長の推薦が必要である。

「AO入試」は、大学・学部が要求する条件に自分にあっている訴求が受験の要件になる。

国立大学協会は、2021年度までに、「定員の30%」をAO入試にすると目標を掲げている。

公募推薦は、大学・学部によって差異が大きい。

 

手元の資料によれば、すでに私立大学の40%以上の学生が推薦・AO推薦で進学している。

この比率は、今後増えると予測されるので、思考力・判断力をテストする以前に「基礎学力」が重要になってくる。

私自身が、実際に私立大学の教壇に立っていたので、入学してくる学生の「基礎学力の重要性」を痛感している。

基礎学力とは「学びに向かう姿勢」を含んでいる。「とりあえず進学」という学生は、真面目な教授には迷惑である。

 

大学進学率の上昇に対応したのは「国家ではなく民間」であったから、際限なく大学・学部・学科の増加が続いた。

ここに日本の大学が抱える問題がある。

政治と大学経営が繋がったのは、今に始まったことではない。

また、「定員を割り込んだ現在」でも、私立大学の経営的な生き残りのために、私立大学はいろいろ仕掛けている。

政治・政治家は多様な私立大学と複雑な絡み方をしている。

本来、選挙・利権と教育はかかわりないはずであるが・・・。

 

中央教育審議会は、今後の人口動態を見据えて、現在約780ある国立・公立・私立大学の「連携・統合」を推進する考えでいる。学校法人は法的に優遇されている。膨大な補助金を受けている。こうしたことも知っている必要があるだろう。

しかし、これからの私立大学の形態は不安定である。母校がなくなってしまった卒業生にならないようにしたい。

 

私立大学の入試・偏差値の基礎知識

受験でいえば、私立大学には「伝統的な出題形式」がある。

典型的なものは国際基督教大学(ICU)の出題であるが、過去問を通してこの特徴を調べることが大切である。

入試業務を「全学で取り組んでいる大学」がある一方で、「学部が独立」に基盤をおいている大学もある。

それが入試問題の特徴に表れる。どこも同じだと考えない方がいい。

 

こうした事情を踏まえることも受験対策として重要なことである。

入試問題の作成では、「一挙に極端な改変をしない」ことが、私立大学の出題の原則になっているから、「過去問の傾向分析は不可欠」である。赤本などで過去問を通して確認しておこう。志望大学に要請すれば、過去問は入手できるハズである。WEB上で公開している大学もあるはずである。調べることを勧めたい。

 

さて「偏差値」の基礎知識をまとめておこう。

「偏差値」は、集団の中で、どの位置にいるかを理解するに適している。

「成績を偏差値で示すことを発見」したのは、桑田昭三という東京都の先生である。

1960年の中ごろから、受験生の学力を測る「ものさし」・「指標」として広まった。桑田先生は真摯に進路指導をしている中で「ケトレー統計学」に行きつき「偏差値」に至ったという。統計学の話である。受験指導は偏差値に頼っているところが多い。

 

だから、「同じ得点」を取っても、集団が異なれば偏差値が異なるのは当然である。

A大学における偏差値と、B大学の偏差値は異なる。

模試が返却されるとき、「志望大学ごとに偏差値が異なる」理由である。

同じ大学でも、偏差値80以上という場合は、その集団の中から飛びぬけてレベルが高いという評価であり、40以下というのは非常に低いということである。偏差値は、集団のほぼ真ん中からみて、どれくらい離れているかを示すものだからである。

知っているようでいて「知らない人」が意外と多い。

 

高校3年生で受験生になったら、「偏差値より得点」に拘るのが良い。

この問題に対して、どれくらいの点数が取れたか。得点に拘ることである。

東大など超難関大学では、2次テストで「完答」ばかりを求めなくていい。

特に数学では「部分点」が評価される場合が多いからである。

 

センター試験や模試では、誰でも取れる基本問題が(1)・少し難しい問題は(2)・難問は(3)という区分けがある。

得点差を出すためであると考えていい。だから、基本的な(1)の問題を落としてはいけない、必ず得点につなげることである。

自信があっても(3)から始めるのは間違いである。

時間不足になる危険性がある。堅実に着実に得点を重ねることがポイントである。

 

最近は、成績の返却の時に、個人の出来具合を示す「個人帳票」が渡されることが多い。

この中に「大問・小問の解答率」が記載されている。

「自分はどこができていないか」「今後どこに重点を置いて勉強すべきか」をオンデマンドで考えるためである。

判定ばかりを気にしないで.こうしたことに注意したいことである。出題された問題・解説をあわせて読む習慣をつけたい。

 

勉強は「個人で始まり、個人に還ってくる」ものである。

自分自身で理解できなかった分野は、「面談指導」を受けるのが最良の受験勉強である。集団では一般論に終始してしまうからである。

 

LEADESTのような個別指導塾では「受験情報」を「オンデマンド」に組み立てて、きめ細かく受験までの作戦をたてることができるのが利点である。大手予備校がよいと画一的な考えに偏らないようにしたい。

安易に焦るより冷静に対応して行かなくてはならない。軌道に乗ったら「そのままGO!」である。

 

秋になると心理的に不安定になる人が多い。しかし、ここからが勝負である。

快食快便。健康と強い意志が大切になる。LEADESTでは「夏期講習」から受験態勢に踏み込んでいくのが良いだろう。

 

「いままでは高校生」、「これからは受験生」である。

受験日までのスケジュールをしっかり立て、闘争心を燃やして頑張ろう!!

 

なお、「2018年の合否追跡」の結果はどうだったのか?

次の試験に配慮しなくてはいけないことは何か?

・・・こうした具体については。ベネッセと河合塾のデータに基づいて、これからメッセージにしていこうと思っている。

 

 文:顧問 安達昌二