受験生の親 ~6つのタイプとは?~

受験生に対する親の態度を分類してみよう。

親というより、保護者というべきだろうが、

この際は、ストレートに「親」という方が伝わりやすい。ご理解を!!

ともあれ、「親の視線」で受験生を見ることにしよう。

 

受験が近づくと、本人よりも、「親の方が受験生」になってしまう例が多い。

秋風が吹くようになると、そんな「親」「保護者」が多くなる。

可愛さ余って「自分を受験者にしてしまう」からである。

 

受験生に接する親はいかにあるべきか。

私自身の体験と反省を踏まえて「親の姿勢」を6つに分け、それぞれにコメントしてみよう。

 

1 安全第一型

「何しろ心配で仕方がない」。進学先がないでは困る。

どこかの大学の「合格通知」が欲しい。早く安心したい・・・。

受験で子供を追い込みたくない。受験で悩むより、世間的な評価が高い大学に安全に進学させたい。一番好ましいのがブランド校の「指定校推薦」である。必死になって「学校指定」の枠を求める。そのために、子弟には、学校の定期テストの点数アップに努力させたし、部活も、ボランティア活動にも参加させた。学校の評価を高く獲得するために、親も子も努力してきたのだから、その成果を早くみたい。実力ではとても進学できそうもない難関校も視野にある。

 

・・・<この受験生の合格率は80% 大学の選択次第です>

 

<助言>

「小説にあるドラマのような人生より、安定したゆとりのある人生を歩ませたい」と願うのは、多くの人の「親心」である。波乱万丈の人生は理解できても、自分の子供には、苦しみや悩みの多い人生は望まない。「親心」が、入試・受験でも表れる例である。受験の修羅場を経験させるより「安全な推薦・AÒ入試」で進学させたい。一般入試でも「ワンランク下げても確実に合格できる大学へ」という想いが強い。

しかし、親心のような人生を貫くことができる人は少ない。人生の波乱万丈は避けられない。形はどうであれ、逞しく・強く「生きる力」をつけないといけない。親心と受験生の意志が必ずしも一致しないことが多い。気をつけたい。

18歳は人生の「門」だ。「悲鳴をあげながら強くなる」のが若者であり、人間である。「壁」を避ける知恵より、壁に向かって挑戦して行く強さを、受験を通して体得させたい。チャレンジ精神は生涯にわたって重要だからである。

海外では、本格的なAO入試が多い。安易な「青田買いのAO入試」での進学は賛成しない。

 

2 直前狂乱型

余裕があるうちは、一見「お釈迦様」のように、受験生の意思を尊重している。しかし、受験が近づくにつれて、焦りから錯乱して、受験生の負担になる発言や行動をしてしまう親がいる。真面目で、一所懸命なだけに始末が悪い。特に、熱心な母親にこの傾向が強い。

受験生は勉強どころではなくなり、自分のことより「親の顔色をうかがう」時間が長くなる。受験生の「心身のコントロールを乱す」という悪循環になる。

そのような状況を作り出しているのが親自身であるという自覚がない。親のイメージ通りにならないことへの「イラダチ・混乱」は、これまでの成績がよく、素直な生徒を持つ親が陥りやすい落とし穴である。

 

・・・<この受験生の合格率は低い>

 

<助言>

11月の模試結果を見て、親が焦る場合が多い。「センター試験で高得点が取れない」ことを恐れて、早々と受験生を追い込むようなことは絶対に避けたい。

11月下旬から12月・1月と、真剣に勉強する受験生は、100点以上伸びる。

1教科10点アップさせればいい。3つミスをなくせば達成できる。

特に、入試改革の直前のセンター試験は易化するのが、これまでの例である。

親が焦る必要はない。保護者がやるべきことは、受験生の健康管理だけ。消化の良いものを食べさせ、睡眠と運動に留意して、家庭を安定させるなど、環境整備が親の仕事である。家庭内のもめ事・夫婦喧嘩は絶対に避けたい。

 

3 ホッタラカシ型

受験について「何にも知らない」。知ろうともしない。また、親の知人・友人と受験について話すこともない。「子供は子供の人生がある」「学校や先生の指導に任せておけばいい」「親は忙しい」という姿勢である。親・子といっても、それぞれ別の人生・生き方があると割り切っている。受験の記事にも関心を持たない。実際に、口を出さない。口を出せない。よく言えば、子弟を信用して自主性を尊重した「自由放任」である。現実はホッタラカシ。

いずれの場合も,受験生が「自立」すれば成功する。「甘え」てしまえば受験が失敗する。

 

・・・<受験生の合格率は、自立した場合には高い・甘えている場合は低い>

 

<助言>

親の仕事が忙しくて、受験をむかえた子弟のことは気になるが「どうしようもない」場合がある。親自身が無知で受験経験もなかったり、単身赴任していたりしていて、よくも悪しくも「ホッタラカスしかない」場合もある。

親としてどうしようもなくても、一度は受験について正面から話し合いたい。「受験は生き方の問題」でもあるのだから。

できない時でも「家庭の経済状況」だけはしっかり話さなくてはいけない。

自宅から通学させなくてはいけないとか、国公立大でなければいけないとか、奨学金はどうすればいいのかなどである。進学すれば「まとまった経費」が必要になる。この経費を賄うつもりか。経済力がないのか。

「自立」した受験生が、逞しく、強く、自分の人生を創造的に作っていく場合がある。その逆で、甘えられない状況に「ひねくれて」自堕落になる場合もある。親の姿勢の基本はホッタラカスわけにはいかない。

 

4 中途半端型

受験についての関心は高い。だから、ある程度は知っている。保護者会、進学講演会に頻繁に出席する。「つぎはぎの情報」であるが、かなりの知識と情報を持っている。しかし、独善的な「思い込み」が多い。学力(教科)の伸長・可能性は専門家しかわからないからだ。

子弟の志望校を中心に情報を集めるので。変化の多い受験情報についていけない。入手したばかりの「断片的な情報」を駆使して、絶えず受験生に突っかかっていく。だから、受験生から疎まれ、嫌われる。素人だから仕方がないのだが、冷静に対応していかないと「直前狂乱型」になる。

極端な場合は、「自分の夢」が実現できないと分かると、平気で180度態度を変える親がいる。例えば医学部の受験がダメなら、「どこでもいいわ!」という具合である。受験生は振り回されて迷惑を被る。

模試の判定値に敏感である。ママ友の話などのウワサ・情報を基準においている。親の要望を最優先にして受験生に絡むので、勉強どころではなくなる。

 

・・・<受験生の合格率は、親との距離感次第。低迷する危険性がある>

 

<助言>

受験生を持つ親の中で一番多いタイプである。何しろ真面目で一生懸命だし、受験生のために情報を集めたり、資料を準備したりしているのだから批判できない。親の体験をべースにして、最新情報を集めているのだが,たえず「行き詰まり感」を持っている。

自分の努力が「受験生に貢献」できることを願い、生きがいにしている。

「少し肩から力を抜いて」、受験生だけを見つめないで、家族の一人ひとりに眼をやるゆとりが欲しい。受験は、受験生だけのものではなく「家族全員」が一丸になることを要求するからだ。例えば家族の一人が風邪をひいたり、事故に会ったりしていたら、受験生の足を引っ張ることになる。受験生の「自立を支援する」のが親の役割だと冷静に割り切り、むやみに環境に振り回されないこと、また親自身が「環境を振り回さない」ように注意したい。

感情的な言動に注意して、落ち着いた家庭生活を確保することに心掛けたい。

 

5 イライラ型

要求水準が高く、受験生に対する期待度が高い。しかし、正面から受験生に向かう勇気がないので、たえずイライラしている親である。学校の進学面談に行くことが少なく、受験について「ゆとり」を持っているポーズを取っているが、本当は知りたくてたまらない。プライドが高いので素直になれない。。秘かに、書店などで受験情報を得たり、インターネットで受験情報を検索したりするのだが、実際はどのようにしたらよいかわからない。

模試や学校の成績が、親の要求水準にそったレベルなのか、どのレベルの大学に入りそうなのか、内心イライラしている。親の心理が態度に出る場合もある。単身赴任の父親、成績の伸びが期待できそうもない親に多くみられる。

 

・・・<受験生の合格率が、親の要求水準に達することは少ない>

 

<助言>

高学歴で社会的な地位が高い親が多い。進学する大学の「要求レベルは高い」。少なくとも名前が通っているブランド大学に進学させたいと思っている。学歴社会を批判するが、自分の子弟にはしっかり学歴をつけることを期待し、内心は「受験生には強い要求」を持っている。親自身は「受験の成功体験」を持っているので、受験生が、自分の要求にそうだけの学力があるのかないのか不安を持っている場合が多い。

親の姿勢にヤマ・タニがあると、受験生の心理が落ち着かない。受験生は「親の要求」を本能的に知っている。期待に応えようとするが、空回りして合格確率が低くなる。出願校に注意したい。受験生を親の気分に振り回すことがないように、感情のコントロールに心掛けたい。

 

6 薬師如来型

受験について、いろいろなことを知っているが口に出さない。

受験生が陥りやすいスランプのこと・受験生の性格・受験に対応する学力・愛読書・友人関係・学校のこと、塾・予備校のことなどを理解している。が、指示する態度ではなく、「聞き上手」になっている。基本的にカウンセラーの立ち位置でいる。受験生が相談に来た時は、的確なアドヴァイスができるように、内々に努力している。柔和な姿勢でいるが、時として厳しい。妥協を許さない。薬師如来のように、苦しみを取り除く「薬」を持っているが、自己治癒力を大切にする。子弟・受験生に対す「深いまなざし」を持っている。受験は本人の希望通りにいかないことが多いことを承知している。将来を見据えて、心身ともに健康で前向きな人間であるように願っている。

 

・・・<合格確率は、非常に高い>

 

<助言>

理想的であるが、なかなかこの姿勢を貫くことは難しい。受験生は、ストレスの塊になっていて、イライラしたり、八つ当たりしたりすることがあるので、受け止め方が「柔軟」でなければならない。特に、「初めて受験生を持つ親」にはこの姿勢を取ることが難しい。

受容するばかりではなく、時には激しく、厳しく叱咤することも重要である。

お釈迦さまも、「憤怒」の表情をする時があるように、柔和で受容することばかりが「善ではない」ことに注意したい。

入試環境は激変している。情報も変化している。専門家の助言を聞くことが重要である。専門家は「月光」菩薩・「日光」菩薩の役割を果たして、合格に導いてくれるに違いない。

文:顧問 安達昌二