この不確定な時代にどう生きるか

私たちは、ものすごく不安定で、不確定な時代に生きていますね。

世界や日本の政治・経済・社会のどれをとっても不安定で不確実です。

その上、日本だけでなく、世界各地に地震が起こり、異常気象が発生し

人々の生活を脅かしています。

 

日本の教育分野に限ってみても、大学入試改革を起点として学校現場の最先端が揺れ動いています。

登校拒否・非行・モンスターペアレンツ・暴力・金銭トラブル・・・。

「教育の指針」を失った状態で不安定な事件が発生しています。

 

私たちは、どこに向かって走っていったらよいのか、戸惑うばかりです。

こんな不安定な時代の「解決モデル」はあるでしょうか。

温故知新。ヒントになるものを探すのが今回のテーマです。

 

今だけの悲劇に嘆かず賢く生きる

実は、歴史を紐解いてみても、いつだって安定した時代はなかったのですね。

戦争・紛争・争いごと・・・人口増加に伴う食糧・エネルギー不足を補うために、他国と争い、国内治安の不安定さに困惑し、小国は大国の覇権争いに巻き込まれる。

いつだって、庶民は自分のいのちを守り、家族や地域・国家を守るために四苦八苦していたのです。

戦争・災害は当たり前で、現在の中南米・中東の難民と同じで不幸でした。

 

多くの人は、大きくは国益を守るために戦い、身近では「個人の生き残り」のために策を練り、知恵を絞り、生きるために努力しました。

また、人々は、うまれ育った地政・風土に縛られ、繁栄と滅亡、興隆と堕落を繰り返してきたと断言していいでしょう。

 

このように考えると、私たちは「いまだけの悲劇」を嘆く必要はなく、もっと強く、したたかに「現状打破のエネルギー」を燃やし、賢く生きる方法を探るのがよいと思います。

「弱さを売り物」にしてもどうしようもないからです。

 

さて、現在の私たちには「ヘレニズムの時代」の人々の生き方が参考になるように思います。

マケドニアの王アレキサンダーの外征で、古代の大帝国ペルシャを始め多くの国が滅亡・統一されたいわゆる第1期グローバルな時代です。

頼りとする国家・地域共同体が崩壊し、人々は孤立し、「強者の論理」がすべてに優先した時代です。こんな時代に生きた人々は、どんな知恵を持っていたでしょうか。

 

それは大別して「3つの方向」に流れたと思います。

 

①世界中どこでも通用する実力の持ち主

1つ目は、「世界中どこでも通用する実力の持ち主であろう」とした人々です。

自分を鍛え、磨き、潰れない強さをマスターすることを選択した人々です。

 

今回の「共通テスト」が求める理想的な人間像は、現代のグローバル社会にあってこのような人をイメージしていると思います。

外国人と対等に付き合うだけではないのです。

国際会議では、リーダーシップを発揮して、行動ができる人間の育成です。

例えば、国連難民高等弁務官を務めた緒方貞子さんのような人だと思います。

世界中の人々と、堂々と渡り合いながら、威張らず、臆せず、問題点を注視し行動できる日本人を育成する。

そのための教育システムを構築しようというのです。

高い知識・教養・技術を持たなくては、他国の人からも「尊敬」されない。

現在の教育制度のままでは実現できない。だから「改革しよう」と考えたのだといえます。

 

ITの技術はグローバル社会では、どこに行っても必要な技術・知識ですね。

これからの社会では、コンピューターを使って学習することは当然な「技術」から、大学入試でも英語4技能の学習などに積極的に取り入れ、若い人を啓発しようというのです。

残念ながら、学校教育が一番遅れているのが現状ですから、大学入試に取り入れることによって、知識・技能を啓発しようというのだと解釈することができます。

 

エリート企業でなくても、普通の中小企業でも「海外駐在」が当たり前の時代になりました。

また、これらの中小企業でも、外国籍の人といっしょに働く時代が来ています。

入管法の改訂に象徴されるように、田舎の地域共同体でも、歴史・伝統文化が異なる人と「共生」しなければならない時代です。地域に住む人の閉鎖的な意識を変えなくてはなりません。

 

②隠れて生きよ

2つ目は、「隠れて生きよ」という生き方です。

ヘレニズムの時代では、一部の人々が「精神的に乱れることのない世界」に逃れ、隠れて生きることを選択しました。もちろん一般庶民にはそのような選択は許されないことでした。

混迷から逃れて生きる生き方は広がりませんでした。が、現在には通じる生き方ですね。

経済的に恵まれた人だけでなく、一般庶民も「隠れて生きる道」を選択している人がたくさんいますね。

政治・経済に関心を持たず、自分の好きなことに集中する人々です。

いわゆる「オタク」です。

科学・研究・芸術・芸能・開発・スポーツに没頭する「高級オタク」もいますが、多くは煽動に弱い「大衆オタク」ですね。

 

隠れてではなく「目前のことにのみ」の人々は、近隣を見ただけでも非常に多いですね。

もう少し社会的に活動し、視野を広げてみたらどうかと思う時がありますが、そんなことには関心を示さない。

もっぱら自分のことだけ、目先のことだけに集中する。

最新ファッションに身を固め、化粧して、グルメを楽しみ、海外事情に詳しい人が大衆オタクです。

非難の対象でないですが、豊かさが保障されている時は良いですが、不確実・不安定なこの時代の生き方として、もう一度考え直さないといけないのではないかと私は思っています。

 

この人たちは非常に強い反面「鬱」になりやすいという危険性をもっています。

医師の診断・指導を受けている人を除きますが、最近「ウツ」に悩む人が目立ちますね。

いわゆる「引き籠り」です。病気なのか、甘えているのか判断できない人が目立ちますね。

若い人が「逃避的な生き方」を選び、非行動的になると社会全体が活力を失い、街に魅力がなくなりますね。

人工知能(AI)だけでなく、最近、中国でヒトの受精卵の「遺伝子操作」で子供をつくった報告がありましたね。「禁じ手」さえ破る人が現れる時代が来ています。

もはや「隠れて生きる」ことの根本が問われていると言えます。

 

③宗教・信仰の道

3つ目の生き方は宗教・信仰の道に入る生き方です。

ヘレニズムの時代は、社会の混乱と共に「キリスト教への入信者」が増えていきました。

現代でも、社会・個人の矛盾を宗教で解決していこうという人々がいますね。

新興宗教団体の活発な動きをみると分かり易いです。

 

古代ギリシャのプラトンは「イデア論」を展開しましたが、ヘレニズムの時代になると「新プラトン学派」の哲学と、キリスト教の一神教が繋がって中世に繋がったと思います。

宗教哲学は学問ですから、宗教そのものとは異なりますが、大学に進学したら、こうしたこともしっかり勉強していきましょう。

 

いま、世界・日本はSDGs(エスディージーズ)で動き始めています。

これは、、Sustainable Development Goals (開発可能な開発目標) の略称で、すべての国連加盟国が2030年までの達成を目指す「みらいのカタチ」です。

貧困・教育・環境・平和など17項目のゴール(意欲目標)と、169の行動目標が決定されていて、2015年9月に国連で開かれたサミットの中で採択されたものです。

国連の決定が、世界中の隅々まで広がるために、私たちは実践的に答えを導き出さなくてはいけないですね。

これが不安定で不確定な社会を乗り越えていくための努力目標です。

 

これは「プレテスト」でも出題されていますから、今後、形を変えて何度も出てくるでしょう。

推薦入試やAO入試の面接や小論文で「自分が実践したこと」が質問されますか、日々の生活の中で意識を高めておきたいことです。

 

私は、不安定で不確実な時代だからこそ、強い意志と努力が求められていると思います。

どんなに歴史を振り返っても「安定した時代」なんて、始めからなかったのです。

不安・悩み・争い事はあって当たり前です。だから「局面打開のエネルギー」を燃やし、もっと強く、賢く生きる道を求めましょう。

 

目前に受験をひかえた人は、「攻め」の姿勢を崩さず、挑戦的であるように努力してください。

いま大切なことは、甘えと言い訳を削ぎ落すことです。